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東京ミッドタウン日本橋は2026年9月30日に竣工し、野村ホールディングス、第一三共の本社、バンク・オブ・アメリカの日本拠点が順次入居している。人形町、茅場町、小伝馬町周辺で賃貸物件を保有するオーナーが見極めたいのは、すでに生じている需要と、2027年、さらには2040年まで待つ必要がある需要の違いだ。加えて、周辺の一棟物件の売出利回りに、こうした期待がどこまで織り込まれているかも確認したい。
竣工した施設と、まだ開業していない施設
日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業の区域面積は約3ヘクタール。三井不動産と野村不動産が参画し、A・B・C街区に既存の日本橋一丁目三井ビルディング(D街区)を加えた四つの街区で構成される。銀座線・東西線・浅草線の日本橋駅に直結する。
主棟はC街区の日本橋野村三井タワーで、地上52階、地下5階、高さ約284メートル。10~20階と22~38階がオフィスフロアで、基準階面積はそれぞれ約1,970坪、約1,370坪となる。
39~47階にはヒルトン傘下のウォルドーフ・アストリア(197室)が入り、48~51階には71戸の賃貸住宅「Waldorf Astoria Residences Tokyo Nihonbashi」を設ける。面積は約60~430㎡。B街区の「日本橋リバーサイドテラス」にも48戸の住宅がある。
三井不動産の10月8日付発表によると、竣工後に先行して入居するのはオフィステナントだ。5~8階のMICE施設(約1,500㎡のホールが二つあり、それぞれ約1,600人を収容)は2027年10月に開業予定。約2万㎡、約100区画の商業ゾーンは2027年内の開業を計画しており、従来のCOREDO日本橋は改装のため10月15日に一時閉館した。街区全体のグランドオープンも2027年内を予定する。
この建物は「日本橋リバーウォーク」の第一期に当たる。日本橋川沿いの約11ヘクタールの範囲では5件の再開発事業があり、首都高速の日本橋区間の地下化も進められる。高架橋の撤去は2040年前後と見込まれている。

新たな需要はどのような住宅に向かうか
先行するオフィステナントの入居から想定されるのは、通勤に伴う住宅需要だ。本社機能を持つオフィスで働く人の一部は、徒歩や地下鉄で一駅の範囲に住まいを求めると考えられ、主な受け皿は単身者やDINKs向けの1K~1LDKとなる。ただし、これは需要の波及経路についての推測であり、入居する従業員数や、そのうち近隣で賃貸住宅を探す人数は、現時点で公表されていない。
ホテルとMICEがもたらすのは宿泊客や来訪者であり、一般的な月額賃貸住宅への影響は限られる。むしろ飲食店や店舗テナントの営業に先に表れる可能性が高い。タワー内の賃貸住宅71戸は富裕層向けで、周辺に多い20~40㎡のコンパクト住戸とは競合する市場が異なる。
日本橋駅・三越前駅周辺は、もともと住宅の数が少ない。過去12か月にUrbalyticsが記録した両駅から徒歩7分以内の住宅募集は、わずか112件だった。同期間の人形町・水天宮前周辺は790件、小伝馬町・東日本橋周辺は627件。オフィスで働く人が近隣で住まいを探す場合、実際の成約はこうした外側の駅周辺で生じる可能性が高い。
現在の賃料:中心部の駅は単価が高く、月額の差は小さい
募集賃料の本体部分(管理費を除く)から算出した単価の中央値で見ると、四つの駅圏は二つの水準に分かれる。
茅場町:㎡当たり5,381円、月額賃料の中央値16.4万円、192件
日本橋・三越前:㎡当たり5,365円、月額賃料の中央値16.4万円、112件
人形町・水天宮前:㎡当たり4,975円、月額賃料の中央値17.4万円、790件
小伝馬町・東日本橋:㎡当たり4,974円、月額賃料の中央値16.5万円、627件
中心部の両駅と人形町周辺の単価差は、㎡当たり約390円。一方、月額賃料の中央値は人形町周辺の方が高い。募集住戸の平均面積が約37.2㎡と、日本橋・三越前の約33.8㎡より広いためだ。保有物件の賃料上限を見積もる際には、月額賃料の中央値をそのまま比べるのではなく、単価で比較する必要がある。

これらは同じ時期の異なる地点を比較した数値であり、立地や築年数の構成を反映したものだ。東京ミッドタウン日本橋による賃料上昇効果を示すものではない。四半期ごとの時系列もサンプル構成の変化が大きく、同一物件の賃料上昇率とはみなせない。事業の影響を検証するには、2027年のMICE・商業ゾーン開業前後で、人形町や小伝馬町周辺の単価が中心部の駅の水準に近づくかを確認する必要がある。
一棟物件の利回りはすでに低い
より注意したいのは、周辺の一棟収益物件の売出価格水準だ。過去12か月に売出しまたは価格変更の記録がある一棟物件のうち、人形町駅圏の9棟は表面利回りの中央値が3.97%、小伝馬町駅圏の6棟は3.64%だった。茅場町は3棟のみ(中央値4.33%)で、日本橋駅圏にはサンプルがなかった。

ただし、中央区全体と比べれば、この水準は低いわけではない。Urbalyticsが公開する中央区一棟収益物件市場月報によると、2026年9月の中央区の一棟物件の表面利回りは2.77%(33件)、東京都平均は5.00%だった。日本橋周辺の外側の駅の利回りは区平均をやや上回るものの、5%にはほど遠い。
表面利回りは売出情報の年間収入を売出価格で割ったもので、管理費、修繕費、空室による減収を差し引いていない。3.6%~4.0%で購入すれば、経費控除後の実質的な収益はさらに低くなり、収益改善は賃料上昇に頼ることになる。東京ミッドタウン日本橋の効果を収支計画に織り込むなら、想定する賃料上昇幅を実際の募集・成約結果で検証する必要がある。
Urbalyticsのデータから読み解く
Urbalyticsの賃料統計を駅、徒歩分数、面積で絞り込むと、保有物件の募集単価を人形町や小伝馬町の分布と直接比較できる。今回の四つの駅圏では、下位四分位(P25)が㎡当たり約4,450~4,770円、上位四分位(P75)が㎡当たり約5,430~6,070円だった。
査定と賃貸経営にどう生かすか
人形町や小伝馬町周辺に賃貸物件を保有するオーナーは、まず募集中の住戸の単価を、中心部の駅の㎡当たり5,365円と比較するところから始めるとよい。差が大きい間取りでは、契約更新や新規募集の際に小幅な引き上げを試す余地はある。ただし、判断の基準は実際の成約結果であり、竣工のニュースだけを根拠に一度に値上げするのは避けたい。
査定上、オフィステナントの入居はすでに起きた事実として扱える。一方、MICEと商業ゾーンは2027年に開業予定であり、今後の動向を確認する項目となる。首都高の高架撤去は2040年前後と十年以上先のため、現在の賃料想定に織り込むのは適切ではない。既存の分析で取り上げた六本木五丁目西地区の段階的な再開発や新宿中央公園北西側の39階建て計画についても同様に、実施済みの部分と計画段階の部分を年度ごとに分けて捉える必要がある。
人形町や小伝馬町で利回り3%台の一棟物件の購入を検討する投資家は、まずレントロールで各住戸の単価が駅圏の中央値をすでに上回っていないか確認したい。すでに高水準の物件では、事業の効果が現在の賃料に織り込まれている可能性があり、今後の賃料増額余地は限られる。単価がまだ中央値を下回り、1K~1LDKを中心とする物件にこそ、より現実的な調整余地がある。
データについて
賃料データはUrbalyticsが収集した募集賃料(本体賃料、管理費を除く。税の扱いは不明)であり、成約賃料ではない。対象は2025年11月3日から2026年11月3日までに初めて観測した、東京都内のマンションの募集情報で、該当駅から徒歩7分以内のもの。「小伝馬町・東日本橋」は小伝馬町と東日本橋(馬喰町・馬喰横山を含む)をまとめた駅グループを指す。
一棟物件の利回りは、同期間に売出しまたは価格変更の記録がある一棟収益物件の売出表面利回り。サイト間の重複は統合し、1%以下と25%以上は除外した。年間収入が満室想定か現況収入かは、掲載者によって異なる。
茅場町の一棟物件はサンプルが3棟のみのため、参考値とする。中央区の2.77%は公開市場月報の2026年9月の月次集計によるもので、駅圏の12か月の集計期間とは条件が異なり、直接差し引いて比較することはできない。
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参考資料
三井不動産、2026年、「東京ミッドタウン日本橋」2026年9月30日竣工 https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2026/1008_01/
野村不動産、2026年、日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業 街区名称決定 https://www.nomura-re.co.jp/cfiles/news/n2026042106653.pdf
Impress Watch、2026年、「東京ミッドタウン日本橋」竣工 https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2146690.html
健美家、2026年、東京ミッドタウン日本橋が竣工、高さ約284mの複合タワーが完成 https://www.kenbiya.com/ar/ns/region/tokyo/10662.html
Urbalytics、2026年、東京都中央区の一棟収益物件相場 https://www.urbalytics.jp/market/area/tokyo/chuo-ku/building
カバー写真:日本橋と首都高速の高架(Photo: ayumi kubo / Unsplash)
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