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練馬区は2026年10月1日に「大江戸線延伸――沿線まちづくりデザイン」を公表した。計画で暫定とされた駅は、土支田、大泉町、大泉学園町の三駅で、開業の目標はおよそ2040年である。投資家にとって肝心なのは、開通するかどうかではない。駅ができるまでの十数年のあいだに、賃料や利回りへすでに上乗せされた分があるかどうかだ。今日の募集データが示す答えは、現時点では見当たらない、というものである。
計画で決まったことと、まだ決まっていないこと
練馬区が公表した設計と報道によると、決まっているのは次の点である。暫定駅三駅の位置、およそ2040年という開業目標、区が積み立てている延伸基金(2025年度末で約125億円、2026年度は報道によればさらに約30億円を積み増し)。道路では、補助230号線の用地取得率が約73%である。
決まっていないのは、大泉学園町の駅前で予定されている第一種市街地再開発事業だ。地権者の合意形成が進みにくく、風致地区の制限もあって事業の採算が取りにくいことが、課題とされている。スケジュールは、2027年度に準備組合の設立、2028年度に都市計画素案の提出としているが、いずれも目標にとどまる。2040年は「目標」であって、「契約」ではない。
今日の賃料:駅圏とバス圏で約三割の差
Urbalytics の賃貸募集データを使い、計画沿線の二つの町と、隣接する既存の駅圏を比べた(2026年10月28日抽出、単位は円/㎡・月)。
光が丘駅 徒歩10分以内:3,371円/㎡
大泉学園駅 徒歩10分以内:3,187円/㎡
大泉学園町:2,303円/㎡
大泉町:2,238円/㎡
出典:Urbalytics 賃貸募集データ(2026年10月28日抽出)。光が丘駅のサンプルは5件のみで、参考値として扱う。

大泉学園町と大泉町の単価は約2,240〜2,300円/㎡で、既存駅圏の3,190〜3,370円/㎡より約三割低い。ただし、これは募集賃料であって成約賃料ではない。二つの町はバス利用が中心の地域でもあり、新築物件や広い間取りの割合の違いが数字に混ざる。差額をそのまま「駅ができたときの上昇余地」と読むことはできない。
距離による割安さは見えない:何が言えて、何が言えないか
市場がすでに「将来の駅」を価格に織り込んでいるなら、町の中で暫定駅に近いほど賃料が高いという傾向が見えるはずだ。実際のデータはそうなっていない。
大泉学園町 徒歩10分以内:2,157円/㎡
大泉学園町 徒歩15分以上:2,490円/㎡
大泉町 徒歩15分以上:2,352円/㎡
出典:Urbalytics 賃貸募集データ(2026年10月28日抽出)。徒歩分数は最寄りの既存駅までの距離。

徒歩15分以上の区分のほうが高い(2,490円/㎡に対し2,157円/㎡)。遠いほど価値が高いというより、新築物件や間取りの構成が表れた結果とみるのが自然である。したがって結論は控えめになる。今日の募集賃料には、延伸への期待による上乗せも、距離による割安さも、はっきりとは見られない。これは別々の物件を比べた横断面の比較であり、同じ物件の賃料が上がったわけではない。延伸効果の証拠にも反証にもならない。
買い手の視点:利回りが示すのは「キャッシュフローの価格」
大泉学園駅から徒歩15分以内で売り出されている一棟物件のうち、表面利回りの算出できたサンプルは31件ある。
P10:3.90%
P25:4.57%
中央値:5.46%
P75:6.00%
P90:6.56%
出典:Urbalytics 売出データ(2026年10月28日抽出)、n=31。

中央値の5.46%は売主の売出価格に基づく数字で、成約価格ではなく、運営費を差し引いた後の利回りでもない。ここから分かるのは、このエリアの売主が、2040年の駅を売出価格に織り込んでいないということだ。この路線に賭けるなら、賭ける先は価格にすでに表れている確実な収益ではなく、長期保有によって得られる選択権である。
これから注視したい三つの節目
一つ目は、2027年度に再開発の準備組合が設立されるかどうかだ。大泉学園町の駅前が着工できるかどうかの前提になる。二つ目は、2028年度の都市計画素案が予定どおり提出されるか。三つ目は、延伸基金の積み立てと補助230号線の用地取得が引き続き進むかどうかである。どれか一つでも遅れれば、2040年の目標は厳しくなる。
似た延伸の事例は、過去の記事も参考になる。大江戸線の新座延伸:新駅の価格ロジック、新宿30分圏とブランド路線のプレミアム。東京全体の賃料と利回りの背景は、東京の市場レポートにまとめている。
まとめ
大江戸線の延伸は、期間が長く、再開発の進み具合に左右される選択肢である。今日のデータでは、計画沿線の賃料は既存の駅圏と約三割開いており、延伸への期待による上乗せは見えない。一棟売出の利回りも、ふつうの駅圏と同じ水準で値付けされている。2040年前後に開通するとみるなら、価格はそのために上乗せされてはいない。遅れるとみるなら、再開発の節目の進み具合を、出口の前提として確かめる必要がある。本記事は公開情報と募集データの整理であり、投資を勧めるものではない。
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References
練馬区「大江戸線延伸――沿線まちづくりデザイン」(2026年10月1日策定)
健美家 2026年度大江戸線延伸基金積み増しの報道
Urbalytics 賃貸募集データ、売出データ(2026年10月28日抽出)
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