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番町・麹町のマンション売出単価は茗荷谷の約2倍だが、同程度の面積の募集賃料は約四割高い水準にとどまる。「50㎡で月額50万円」という物件は、直近一年間の募集データには一件も見当たらなかった。

学区を扱った記事に登場する二つの数字
11月5日、マネーポストWEBは千代田区の「名門公立小学校」である番町小学校と麹町小学校を紹介した。記事の中で、不動産ジャーナリストの榊淳司氏は二つの見方を示している。学区内のマンション価格は、文京区茗荷谷周辺の約2倍、月額賃料は㎡当たり約1万円で、50㎡の2DKなら月額50万円に達するという。
記事の背景には、東京23区の中古マンション価格が依然として高水準にあることがある。東京カンテイが10月22日に公表した9月の23区中古マンション平均売出価格(70㎡換算)は1億2629万円。前月比0.4%下落し、4カ月連続の下落となったものの、価格水準自体はなお高い。こうした価格帯では、子育て世帯の住宅選びにおいて、学区も価格や交通利便性と並ぶ条件となる。
記事によると、東京都教育委員会の統計では、千代田区の公立小学校卒業者のうち、私立・国立の中学校や都立の中高一貫校などへ進学した割合は約45%で、23区では文京区の約52%に次ぐ。番町・麹町に子育て世帯の需要が集まる背景には、学区内に住めば入学できることに加え、小学生のうちから中学受験の準備を予定している家庭が多いことがある。
投資家にとって、特に確認したいのは賃料の数字だ。売買価格の差は取得費用を、賃料水準は収入を左右する。仮に「月額50万」が成り立つなら、番町の賃貸収益性は茗荷谷に比べて大きく見劣りしない。以下、Urbalyticsの賃貸募集・売出データで検証する。
50㎡で月額50万円?直近一年間の募集記録には見当たらず
対象は麹町駅・半蔵門駅から徒歩10分以内の居住用区分マンションで、2025年11月から2026年11月までに初めて確認された賃貸募集を抽出した。面積を45〜55㎡に絞ると、計44件で、月額募集賃料(管理費を除く)の中央値は29.95万円、P90は35.07万円、最高額は41.5万円だった。
つまり、この集計期間には、50㎡前後で募集賃料が50万円に達する物件はなかった。同じ条件の茗荷谷駅では31件あり、中央値は22万円、P90は27.5万円だった。両エリアの中央値の差は約7.95万円、倍率は約1.36倍となる。

面積条件を外しても、結論は変わらない。麹町・半蔵門の駅徒歩10分以内にある居住用物件の賃貸募集は計260件で、㎡当たり月額募集賃料の中央値は6,119円、P90は8,325円、最高額は約1.41万円だった。「㎡当たり約1万円」はこの分布の最上位に位置し、一部の高級物件の募集水準であって、学区全体の一般的な水準ではない。
Urbalytics麹町駅の区分マンション市場レポートによる2026年9月の募集賃料単価は7,001円/㎡(管理費込み、63件)。集計条件は異なるが、こちらも1万円を大きく下回る。これらの水準を当てはめると、50㎡の月額賃料はおおむね30万円から35万円となる。
売出価格は約2倍、募集賃料は約1.4倍
一方、記事の「約2倍」という価格差はデータと整合する。Urbalyticsの駅別市場レポートによると、2026年9月の麹町駅の区分マンション売出単価中央値は366.2万円/㎡(39件)、茗荷谷駅は186.1万円/㎡(46件)で、前者は後者の約1.97倍だった。
同月の募集賃料単価は、麹町駅が7,001円/㎡(63件)、茗荷谷駅が4,937円/㎡(189件)で、前者は後者の約1.42倍だった。価格は2倍近いのに対し、賃料は四割程度の差にとどまる。このニュースで投資家が見るべきなのは、この差だ。

見方を変えると、麹町で同じ月額賃料収入を得るために必要な購入額は、茗荷谷の約1.4倍となる。ただし、売出価格と募集賃料は異なる標本に基づくため、この比率は両駅の相対的な位置づけを比べる指標にとどまり、個別住戸の利回りを示すものではない。
なぜ学区のプレミアムは売買市場でより顕著なのか。考えられる理由の一つは、学区内に住むことによる入学資格は賃借人も所有者も同じだが、長期にわたり学区を確保し、住宅を資産として保有するのは主に実需の購入者だという点だ。賃貸市場には単身者や法人の借り手も多く、学区のために高い賃料を払う意向は限られるため、賃料が売買価格ほど上がらない可能性がある。ただし、これは仮説であり、確認には間取りや入居者に関する、より詳細なデータが必要となる。
一棟物件の表面利回りは両エリアとも約3.5%
一棟収益物件の状況は区分マンションとは異なる。Urbalyticsの過去12カ月の売出データでは、麹町駅はわずか2棟で、表面利回りは3.30%と3.68%。半蔵門駅は4棟で中央値3.42%、茗荷谷駅は13棟で中央値3.50%だった。
一棟物件の利回りは両エリアでほぼ同水準だ。ただし、茗荷谷の標本には2024年から2027年に竣工・竣工予定の新築物件が複数含まれ、売出価格が同程度の水準に設定されていることが利回り分布を押し下げている。いずれも標本数が少なく、参考値にとどまる。確認できるのは、番町でも茗荷谷でも一棟物件の表面利回りは3%台であり、費用控除後の純収益はさらに小さくなるということだ。
番町学区への投資では、どの賃料水準を想定するか
番町・麹町で区分マンションを購入して賃貸に出すなら、まず賃料想定をデータに即して見直したい。50㎡前後の住戸では、月額30万円前後で試算する方が実態に近い。50万円で計算すると、収入を六割以上過大に見積もることになる。
次に、収益の源泉を見極める必要がある。購入価格は茗荷谷の約2倍なのに賃料は約四割高いにとどまるため、賃貸収入で取得費用の差を埋めるのは難しい。収益は、実需の買い手が支える再売却価格に頼る部分が大きくなる。新築物件を購入する場合には、千代田区による引き渡し後五年以内の転売を制限する個別の要請の対象かどうかも事前に確認したい。また、再売却時には都心の中古マンションにおける売出価格と成約価格の差も織り込む必要がある。
最後に、ほかの選択肢と比較したい。同じく教育需要の強い茗荷谷は、購入価格が麹町の約半分、募集賃料単価は約七割で、賃貸募集の標本数も多い。学区そのものではなく賃貸収入を目的とするなら、千代田区の区分マンション市場レポートに加えて文京区の各駅も比較する方が、「名門学区」という看板を追うより有意義な場合が多い。
データについて
賃料データは、Urbalyticsが収集した居住用区分マンションの賃貸募集情報(主にREINS)を使用。初回確認日(UTC)が2025年11月5日から2026年11月5日まで、駅徒歩10分以内のものを抽出した。管理費は含まず、実際の成約賃料を示すものではない。
駅別市場レポートの募集賃料単価は管理費を含み、平均賃料を平均面積で除して算出している。売出単価は中央値で、成約済みの売出情報も含む。いずれも2026年9月の集計。一棟物件の利回りは売出情報に記載された表面利回り(年間収入÷売出価格)で、年間収入が満室想定か現況収入かは掲載者によって異なる。
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参考資料
マネーポストWEB(Yahoo!ニュース転載)、2026年「【公立なのに『名門』の小学校】千代田区『番町小』『麹町小』が人気を集める理由」、https://news.yahoo.co.jp/articles/0617973a235641c624761df1f2c99d1c23619881
共同通信(熊本日日新聞転載)、2026年「東京23区、4カ月連続下落 9月、中古マンション価格」(東京カンテイのデータ)、https://kumanichi.com/articles/2049317
東京都教育委員会、2025年「令和6年度公立中学校等卒業者の進路状況調査の結果(速報値)」、https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/07/2025073101
Urbalytics、2026年「麹町駅の区分マンション市場レポート」、https://www.urbalytics.jp/market/station/tokyo/麹町/mansion
Urbalytics、2026年「茗荷谷駅の区分マンション市場レポート」、https://www.urbalytics.jp/market/station/tokyo/茗荷谷/mansion
Wikimedia Commons、2018,年、File:Bancho Elementary School-1a.jpg、https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Bancho_Elementary_School-1a.jpg
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