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Urbalyticsのサービス開始以来、多くの利用者から「機能は豊富だが、どこから手を付ければよいかわからない」という声を頂いています。
本記事では、一連の実際の投資物件事例を通じて、Urbalyticsを使った投資判断の方法を解説します。
⚠️ご注意:賃料検索などの一部機能は有料プラン限定です。
#1 物件情報
基本情報
物件リンク:https://urbalytics.jp/ex/search/cmd4jvjjr0005pxwkipx5iz1w

本物件は東京都葛飾区立石8丁目に位置する一棟の収益ビルで、京成本線「京成立石」駅から徒歩3分の好立地にあります。周辺は商住混合の成熟したエリアです。
1985年12月築、鉄骨造、地上6階、延床面積約168.42平方メートル、土地面積約11.28坪。土地面積は小さいものの建物利用効率が高く、接道は南東向きで幅約14.9メートルの道路に面しており、採光と視認性に優れています。小規模オフィス、店舗、事務所等の用途に適しています。
現在、建物は5区画あり、うち2区画が賃貸中、残りは空室です。満室想定の月額賃料は約53万円、表面利回りは約10%です。
Urbalyticsによる物件総合分析

Urbalyticsの推定では、本収益物件の割安度は36.1%と算出され、周辺の同種収益物件に比べて価格が約3割以上割安であることを示しています。
現在の掲載価格6,300万円を基準に、システムの評価は以下の通りです:
保守的評価価格は約8,400万円、
推定妥当価格は約9,859万円で、潜在的な下落余地は約3,559万円に相当します。
地域比較によると、周辺の類似収益物件の表面利回り(ROI)の通常レンジは4.2%〜9.2%、平均は約6.4%です。本物件のROIは10.0%で、市場平均を大きく上回っており、価格が割安かつ利回りが高いことが示されています。収益型資産の中では相対的に過小評価されていると言えます。
❌ 注意点 — 賃料が明らかに高い
「賃料アップサイド」は通常、賃料上昇の余地を示しますが、本物件ではマイナス(-23.7%)と表示されており、賃料に上昇余地がないどころか、むしろ高めに設定されていることを示しています。これは現行賃料水準が既に市場の高値に近い可能性を示唆しており、将来において借主の退去時に再募集する際は賃料を引き下げる必要が出る可能性があります。投資家にとっては、
現時点ではキャッシュフローが比較的高く、短期的な利回りは良好である;
しかし、将来的な賃料下落リスクがあり、長期的な持続可能性を評価する必要がある。
現状で賃貸中が2区画のみである点を踏まえると、売主が販売価格を引き上げるために想定賃料を過大に見積もっている可能性も否定できません。
#2 値下げ履歴

価格変動の記録を見ると、本件(葛飾区立石)は過去3ヶ月で大幅な値下げと市場での再評価を経験しています。初回掲載は2025年7月中旬で9,780万円、その後7月末〜8月にかけて段階的に7,950万円まで下落し、8月末にはさらに6,980万円となり、最終的に10月23日に6,300万円とされました。わずか3ヶ月で約3,480万円(-35.6%)の下落が生じ、直近3ヶ月での下落率も20%を超えており、典型的な「売り急ぎ」の動きです。
このような頻繁かつ大幅な価格調整は、売主が資金回収や空室対応のプレッシャーに直面している可能性を示し、当初の設定価格が市場の受容範囲を超えていたことを意味します。なお、直近1ヶ月は価格が安定している点から、売主が心理的な底値近辺に到達しており、現行価格での成約を目指している可能性が示唆されます。
買い手にとっては、今回の価格推移は交渉余地と投資機会が共存していることを意味します。現在の6,300万円は周辺の市場評価値を大きく下回り、割安ゾーンに入っています。物件状況が良好で賃料収入が維持できるなら、リスク管理可能な底値での参入ポイントと言えます。
ただし、買主は値下げの理由が建物の状態、入居者の安定性、収益の持続性に関連していないかを確認する必要があります。今回の「売り急ぎ」が潜在的な欠陥に起因するものでないことを確認すること(例:写真で屋上に増築が見受けられる場合、未申請なら安全上の問題があるため、申請手続きや場合によっては撤去が必要となる可能性があります)を怠らないでください。
#3 周辺の成約価格

周辺の取引データを見ると、葛飾区立石エリアの収益物件市場は、総じて高い掲載価格、成約力の低さ、継続的な値下げの傾向が見られます。本物件(立石8丁目、現行価格6,300万円)はエリア内の価格帯では下位に位置しており、周辺類似物件と比べて割安感があります。周辺の販売物件はおおむね1.4億円〜6,000万円のレンジに集中しており、例えば立石5丁目の大規模な商業ビルは5,780万〜5,980万円で売られていますが、土地面積は約500㎡と本物件の約10倍に相当します。つまり、本物件は金額ベースでは低価格ながら、建物面積当たりの単価は競争力があり、『狭小地に建つ高層型』の収益構造になっています。
ページ右上の指標によれば、Urbalyticsは周辺収益物件の表面利回り(Cap Rate)を統計比較しています。エリア内の平均利回りは約6.26%、一般的な範囲は5.4%〜8.1%であるのに対し、本物件の表面利回りは10.0%で、地域基準を大きく上回っています。
ただし、投資観点では、このような高いCap Rateは帳面上の利回りが高いことを示す一方で、潜在的なリスクを伴うことが多いです。例えば、賃料水準が既に地域の高値にある、入居者の安定性に疑問がある、建物の維持費が高い等の可能性が考えられます。したがって、買主は高利回りを「リスク補償のプレミアム」として捉え、賃料の継続性と建物状況が良好であることを確認したうえで取得する必要があります。
4 賃料分析

本『賃料アップサイド』分析によれば、本物件の賃料水準はエリア内でやや高めに位置しており、一定のリスクおよび制約を示しています。システムのデータでは、本物件の平均月坪賃料は 1.03万円/坪で、周辺の同種収益物件の平均は約 0.78万円/坪、差は -23.7%となっています。つまり、本物件の現行賃料は周辺平均より約25%高い水準です。
一棟賃貸物件に限って比較すると差はさらに大きく、周辺平均坪賃料は 0.62万円/坪で、本物件との差は -39.5%に達します。これは現行の賃料水準が同エリアの投資物件市場の平均値を大きく上回っていることを示しています。言い換えれば、賃料水準は持続可能とは言えず、入居者の入れ替わりや契約更新時に賃料を下げざるを得ない潜在的圧力が存在します。
5 総合投資収益性分析

モデルでは、購入価格を 6,300万円、LTV(借入比率)を 60% と仮定し、借入額は約 3,780万円、金利2.8%、借入期間は1年としています。初年度の収入は 200万円、期末(5年目)には賃料下落を反映して 480万円 に減少(-23.7%調整)すると設定しています。また、運営費を20%、売却時手数料を3%、想定保有期間を7年、原状回復費用(改修費)を500万円(原状回復、建物解体等を含む)としています。
右側のキャッシュフロー図は、前半の4年間は返済・運営費・賃料下落の影響でキャッシュフローがマイナスで推移することを示していますが、5年目の売却(キャピタル回収含む)で大きなプラスのピークが発生し、年間収支は約 +7,083万円 となっています。これにより、投資全体は出口で収益を確保する見込みです。システム試算では、目標純収益は約 1,303万円 で、投資額に対して約 47.64% のROC(Return on Cost)に相当します。想定するROCが30%であれば、本投資は当社の投資基準を満たします。
IRRで見ると、20%のIRRを確保するには先の前提に基づき概算で約5,622万円での取得が必要で、現行価格の約89%に相当します。現状価格が安定していることを考えると、大幅な更なる値下げは難しい可能性があります。
まとめ
本件は葛飾区立石にある地上6階の収益ビルで、現行の掲載価格は6,300万円、推定市場評価に対して約36%低く、表面利回りは10%に達します。ただし賃料は地域平均を大きく上回っており、賃料下落リスクが存在します。Urbalyticsのモデル試算では、5年保有で総合的に約47.6%のROCが見込まれ、目標IRRを20%とする場合の妥当取得価格は約5,622万円です。高利回りながら賃料の持続可能性を慎重に検証する必要がある、割安な投資機会と位置付けられます。
本物件リンク https://urbalytics.jp/ex/search/cmd4jvjjr0005pxwkipx5iz1w
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