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Urbalyticsの公開以降、多くのユーザーから「機能は多いが使い方が分からない」というご意見をいただいています。
本稿では、実際の投資物件ケースを通して、Urbalyticsを用いた投資判断の進め方を解説します。
⚠️注意:一部機能(賃料照会等)は有料機能であり、有料会員のみ利用可能です。
#1 物件情報
基本情報
物件リンク(ログインが必要):https://www.urbalytics.jp/ex/search/cmdh6gg61003ujm049bt0hk9i

本物件は東京都目黒区三宿二丁目にある戸建で、東急田園都市線「池尻大橋」駅より徒歩約15分、世田谷区と目黒区の境に位置する静かな住宅街にあります。
土地面積は約67.64㎡、延床面積は約87.48㎡、地上3階建て木造、間取りは2SLDKで駐車場1台分付き。建築は平成8年(1996年)竣工で、新耐震基準の構造で耐震性は良好です。
建物内部はozi design works inc.によるフルリノベーション済みで、システムキッチン、浴室設備、照明、空調などを一新し、外観も改修済み。全体のデザインは明るくモダンで、約14帖のLDKと2室の寝室+サービススペースを備え、若いファミリーや小規模な居住用途に適しています。
また、本物件は第一種低層住居専用地域に所在し、この地域は一般に住環境が静かで日照良好、周辺の生活利便性も整っているため、駒場東大前や池尻大橋の両駅へ徒歩圏内です。
立地が良く、リノベーション済みで即入居可能な高品質中古戸建であり、安心できる構造とデザイン性を重視する買主に適しています。
Urba物件全体分析

Urbalyticsの推定では、本戸建の割安度は3.8%と算出されており、同エリアの同種戸建と比べて市場の妥当レンジよりやや低めの価格設定となっています。
戸建評価は延床面積あたりの単価で行われ、システムの評価結果は以下の通りです:
平均価格(周辺平均の延床面積単価に基づく):約9,868万円
保守的価格(周辺の80パーセンタイルの延床面積単価に基づく):約8,574万円
市場基準の平均価格と比較して、本物件は約317万円低い
周辺類似戸建の延床面積あたり単価(ROI)の通常レンジは 193.7〜568.8万円/㎡、平均は約 372.3万円/㎡です。
❌ 注意点 - 上昇余地が限定的な三宿エリア
本物件は立地・築年ともに優れていますが、投資観点ではいくつか注意点があります。
まず、三宿エリアの地価は過去5年で約1.68%しか上昇しておらず、比較的安定した相場であるため、短期のキャピタルゲインを期待するには乏しい可能性があります。
次に、現状は木造建築であるため、賃貸運用や民泊転用を検討する場合は耐火性能や改修時の法令適合に注意が必要です。
また、建蔽率60%、容積率200%と利用余地はあるものの、図面上では道路接面が狭く、将来建て替えや増築を行う際に建築基準や消防基準で制約を受ける可能性があります。
#2 値下げ履歴

Urbalyticsによる価格変動履歴を確認すると、過去4か月で明確な値下げが行われており、全体として「段階的な下方修正」の傾向が見られます。
追跡データによれば、初回掲載価格は9,998万円(2025年7月)で、その後複数の仲介サイトで継続して販売情報が公開されました。2025年10月中旬以降に複数回の値下げが行われ、最終的に11月10日に9,498万円へ調整され、累計で約500万円(-5.0%)の値下げとなっています。
注目すべきは、本物件が短期間に複数の不動産会社(東京ハウスライフ、現夢デザイン、アルティック、グッドリアル等)により同時掲載されており、単独の専任媒介ではなく共同媒介(一般媒介)の典型的な形態を示している点です。
値下げのペースは特に10月上旬から下旬に集中しており、市場の反応が弱いことを受けて売主側が積極的に価格修正を行い、早期成約を図っていることが分かります。
現時点で成約や再出品(リスティング再開)の記録は確認されておらず、初回販売の段階にあると見られ、短期的な買売の仕手的動きの兆候はありません。トレンドは安定化しつつあり、今後1〜2か月で再下落がなければ売主の価格許容ラインに近づいている可能性があります。買主にとっては、現時点で交渉余地が残っているため、交渉を仕掛ける好機といえます。
#3 周辺相場

Urbalyticsの「近隣売買履歴」によると、本物件(世田谷区三宿二丁目、掲載価格9,498万円)は池尻大橋—三宿生活圏の中心エリアに位置し、周辺は低層住宅や小~中規模マンションが主体で、落ち着いた成熟した居住環境です。
システム集計では、半径約400m圏内に47件の類似中古住宅の取引履歴があり、延床面積は主に70〜130㎡のレンジ、価格帯は7,000万円〜2億2,000万円でした。エリア単位の延床面積あたり価格の平均は約 124.9万円/㎡、80パーセンタイル(上位20%)は約 150万円/㎡で、三宿小地域の高額帯が突出していることが分かります。
価格推移を見ると、直近半年で類似物件の多くが3〜7%程度の値下げを経験しています。例えば徒歩383mにある世田谷区三宿一丁目の2棟(延床約70〜100㎡)は、2024年末〜2025年中にそれぞれ400万〜700万円の値下げを行い、うち1棟は最終的に1億2,400万円で成約しています。これらは市場における交渉余地の存在を示しています。
また、2025年築の新築住宅(例:三宿四丁目、三宿三丁目)も販売開始価格が1.4億〜1.9億円のレンジで小幅な値下げが見られることから、エリアは「高止まり→緩やかな調整」の局面にあると評価できます。
比較すると、本物件の9,498万円は周辺平均の単価をやや下回り、全体の中で中~下位(約40〜50パーセンタイル)に位置しており、価格競争力は一定程度あります。
しかし、複数仲介による同時掲載と継続的な値下げの状況から、売主は市場の底値を探るフェーズにある可能性が高いです。総合的に見ると、本物件は「価格は安定しつつあるが成約までの吸収は緩い」典型例であり、居住用または長期保有を前提とした投資家向けの案件といえます。短期の投機目的の買主には向きません。
4 賃料分析

Urbalyticsの「賃料アップサイド」分析によれば、世田谷区三宿二丁目の本物件の賃料水準はエリア内では中〜下位に位置し、賃料の上振れ余地があると示されています。システムの示すポイントは以下の通りです:
「近隣売買物件」の平均賃料を参照すると、類似物件の推定平均賃料は月額約 18万円(坪単価0.66万円)
「近隣賃貸成約事例(一般賃貸)」の平均水準を参照すると、月額は約 28万円(坪単価1.06万円)
高付加価値なファミリー向け物件(専有または3LDK以上)では、月額で 65万円(坪単価2.45万円) 程度に達する例もある
周辺の賃貸構成を見ると、三宿—池尻大橋エリアでは賃料の幅が大きく、物件タイプによる階層化が顕著です:
小面積の1LDK〜2LDKは主に20万〜30万円のレンジ;
80㎡以上の3LDKは月額45万〜50万円に集中し、面積当たり賃料はおおむね 1.1〜1.5万円/坪で推移
本物件は建物まるごと貸しの想定で、月額28万円以上が比較的妥当な水準と見積もると、本物件の実質利回りは約3.5%となり、核心エリアにおける一棟貸し物件としては平均的な利回りレベルです。
5 総合的な投資収益性分析

💼 モデルの仮定と前提
Urbalyticsの短期キャッシュフローモデルに基づく試算では、投資保有期間を5年、ローン融資比率を60%、金利を2.8%、ローン年数を1年と仮定しています。購入時のリフォーム費用は計上しておらず(リフォームコスト=0)、購入関連費用は物件価格の7%で見積もっています。年間運営費は賃料収入の20%、売却手数料は3%と設定しています。
売却価格は建物・土地の延床単価を基に 112万円/㎡で算出しています。モデルでは賃料収入は成長しない前提(初期・末期ともに年間収入336万円)の、保守的な定常状態を想定しています。
📈 モデル結果とキャッシュフローの推移
右側のグラフを見ると、保有期間中の年間キャッシュフローは概ね安定しており、年次賃料収入は固定の336万円、一方で支出が約585万円となるため、短期的には若干のマイナスキャッシュフローが発生します。
5年目に売却による約9,767万円の資金回収が発生し、総合的な正味キャッシュフローが大幅に改善します。円グラフでは総目標利益が約1,310万円で、その内訳は賃貸による純利益が546万円、売却利益が764万円、全体のROC(投下資本対比リターン)は43.1%と示されています。
モデルから算出される妥当な買付価格は約8,167万円で、これは現行掲載価格9,498万円の約85.99%に相当します。
👉 出价(買付)提案
IRRの観点から、15%〜20%の目標内部収益率(IRR)を達成したい場合、本稿の前提では目安の買付価格を約8,000万円前後(掲載価格の約85%)に設定するのが妥当です。
軽微な改装や賃料引上げによる追加キャッシュフローが見込めれば、更に収益性を高めることは可能です。ただし、現状でエリア相場は安定域にあるため大幅な値下げ余地は限られており、交渉目標レンジは8,500万〜9,000万円付近を中心とすることを推奨します。
まとめ
本物件(世田谷区三宿二丁目)は現在掲載価格が9,498万円で、Urbalyticsの評価ではエリアの妥当レンジよりやや割安と算出され、割安度は約3.8%です。物件は2009年築と記載されており、池尻大橋・三宿の生活圏中心に位置しており、交通利便性と居住環境のバランスが良好です。
外観・内装はリノベーション済みで駐車場1台分があり、居住用あるいは長期保有を前提とした投資に向いています。周辺比較では現行価格はエリアの上位レンジに近く、賃料の上振れ余地は限定的です。
キャッシュフローモデルの結果から妥当な取得価格は約8,000万円(掲載価格の約85%)と考えられます。現状の市場では流動性が高いとは言えないため、取得を検討する投資家は再販時の流動性や賃料維持力を十分に評価したうえで慎重に判断してください。
本物件リンク(ログインが必要) https://www.urbalytics.jp/ex/search/cmdh6gg61003ujm049bt0hk9i
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