文字数: 2567 | 予想読書時間: 6 分 | 閲覧数: 13
日本政府は、2050年までに年間訪日外国人旅行者数を1億人に拡大するという目標を掲げています。2024年には実際に3,686万人が来日し、2025年には4,000万人を超える見通しです。民泊業界はネガティブな声もある中で、こうした実績が「民泊こそが今の時代に求められている形態」であることを裏付けています。
このような成長市場において、新規参入者も経験豊富な運営者も、それぞれ競争力を高めるための工夫が求められます。以下に、実体験や多くのオーナーとの対話を通じて得た民泊運営のヒントを共有します。
1. 明確なターゲット設定
日本における民泊の主な利用者は、外国人旅行者と日本国内の観光客です。外国人は「日本らしい体験」や「好立地」「ユニークなデザイン」を重視し、国内旅行者は「コスパ」や「アクセスの良さ」に敏感です。近年の円安・低インフレの影響でインバウンドは増加傾向にあり、国内旅行者の民泊ニーズも徐々に拡大しています。
ターゲットごとのニーズを把握し、それに応じた部屋づくり・アメニティ・コミュニケーションを用意することが、競争優位性を築く第一歩です。
2. 運営エリアの戦略的選定
立地は民泊成功の大きな鍵です。東京・大阪といった大都市は需要が高い一方で、競争も非常に激しいのが現状です。たとえば東京23区では、新宿区において住宅宿泊事業の届出件数が3,000件を超え、渋谷区でも約1,500件が登録されています。
これに対し、あまり注目されていないエリアには「穴場」としての可能性があります:
- 大田区:特区民泊対応エリアで、営業日数制限がなく通年運営が可能。羽田空港にも近く、短期訪日の外国人旅行者に人気。土地価格も比較的リーズナブルで複数ユニット導入に適しています。
- 板橋区・荒川区:交通アクセスが良いにもかかわらず、観光地化が進んでおらず、物件価格も手頃。中・長期滞在型のコスパ重視型民泊に最適です。
- 墨田区・江東区:浅草やスカイツリーなどの観光拠点に近い割に、台東区や新宿区ほど競争が激しくありません。一部地域では簡易宿所免許を活用し、通年営業も可能です。
また、制度上の違いにも注意が必要です。住宅宿泊事業法に基づく「民泊新法」は年180日までという制限がある一方、大田区のような「特区民泊」はその制限がなく、理論上は高収益が期待できます。ただし、最低宿泊要件(2泊3日以上)などの制限があるため、1泊型の短期旅行者には不向きです。
3. 優良物件を獲得する方法
優良な民泊物件を手に入れるには、以下のような複数のルートがあります:
- 不動産会社との連携:住宅宿泊事業・簡易宿所・特区民泊に精通した不動産業者と提携し、法規制をクリアした物件を紹介してもらう。
- 大家との直接交渉:信頼関係を築くことで、サブリース案件や元民泊物件の再貸し出しチャンスを得られることも。
- 民泊サロンや業界コミュニティ:Facebookグループやイベントでのネットワークから、紹介物件や撤退予定案件の情報を入手。
💼 M&Aプラットフォームの活用
近年では、営業中の民泊物件を家具付きで「まるごと引き継ぐ」M&A案件も注目されています。初期投資を抑えて収益化を早める手段として有効です。
代表的なプラットフォーム:
- TRANBI(トランビ):中小企業向けM&A最大手。民泊・簡易宿所案件も豊富。https://www.tranbi.com
- batonz(バトンズ):地方企業・宿泊業向けにコンサル付きで事業承継をサポート。https://batonz.jp
- 事業承継総合センター:国交省支援の公的色が強いサービス。https://jigyoshoukei.co.jp
- Funai M&A:旅館・民泊などの大規模案件も時折掲載。https://ma.funaisoken.co.jp
4. 柔軟な価格戦略の設計
価格は、需要や競合状況に応じて動的に設計すべきです。一般的に、東京都内の民泊は通常賃貸の1.2倍程度の価格帯で、立地が良ければ2倍以上の例もあります。
主な考慮要素:
- 季節変動・連休・周辺イベント
- 物件の広さ、設備、デザイン、立地
- 清掃費や最低宿泊日数などを含めた総コスト
Airbnbなどのプラットフォームには自動価格調整ツールが搭載されており、さらに PMS(Property Management System)と連携すれば、リアルタイムの需要を反映させたダイナミック・プライシングも可能です。
日本国内で使われている主要なPMS比較
PMS(プロパティ・マネジメント・システム)は、複数物件管理、OTA連携、価格自動化、清掃スケジュール調整に不可欠な存在です。以下は日本で広く使用されている代表的なPMS:
- Beds24:ヨーロッパ発のシステム。Airbnb、Booking.com、Agoda等との完全連携が可能。APIも公開されており、柔軟なカスタマイズが可能。やや技術寄り。
- AirHost:日本国内開発。宿泊実績報告、宿泊者名簿、スマートロック、清掃手配などに強み。日本市場への対応力が高く、中〜大規模事業者におすすめ。
- Tateru BNB PMS:かつて話題となったTateruが開発。行政提出用帳票、消防対応などに特化しており、特区民泊や簡易宿所向け。
- Hosty:スマホ対応が強く、UIもシンプル。個人運営者向け。API連携や拡張性には制限あり。
5. 顧客体験と口コミを最重視
顧客の体験こそが、民泊のリピーターと高評価を生む最大の資産です。
🛎️ 予約〜チェックインまで
- 自動メッセージ送信(予約直後に案内・地図を送付)
- 3言語対応の宿泊ガイド
- チェックイン前日にスマートロックコードとリマインダー送信
🧼 宿泊中の快適さ
- Airbnb基準の清掃SOP
- アメニティ(タオル2枚/人/日、歯ブラシ、シャンプー、冷蔵庫、スリッパ)
- Wi-Fiマニュアル(イラスト付き)
🌟 付加価値の提供
- 地元マップ・観光ガイド(QRコード形式も可)
- ウェルカムカード(名前入り)+プチギフト
- 顧客タイプに応じたレコメンド(カップル/家族/出張)
このような工夫を重ねることで、あなたの民泊は「選ばれる宿」へと進化し、安定した収益と高い顧客満足度を両立させることができるでしょう。